- 作者: 弓削達
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/10/20
- メディア: 新書
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同書はローマの繁栄の構造を分析し,なぜローマが滅んだのかを明らかにする名著であり,新書版というサイズにもかかわらずとても読み応えのある本です。ローマ帝国に関する通史的な理解を深めるにはさまざまな本がありますが,同書は通史ではなく,ローマ帝国の平和維持と支配の構造,経済の構造,文化・風俗の構造を明らかにし,それらを踏まえてなぜローマが滅亡に至ったのかを解き明かすことに主眼があります。また,単に歴史的にこれらを説明するのではなく,現代の世界情勢(現代といっても書かれたのがすでに15年以上前ですが)との対比を意識して議論を進めています。読んでいて現代にもあてはまる病理がたくさんあることに読者は気づくでしょう。そこに見られる問題意識は,書かれて15年を超えた今でもなおあてはまるものが多いです。とりわけ同書の中心的テーマである,「中心」(ローマ・先進国)と「周辺」(ゲルマン・第三世界)との関係は,容易に解かれざる課題として今後も議論の対象となり続けると思います。