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Konstanz als Heimatstadt

松本昭・まちづくり条例の設計思想

まちづくり条例の設計思想

まちづくり条例の設計思想
作者: 松本昭
出版社/メーカー: 第一法規
発売日: 2005/04
メディア: 単行本

まちづくりの法政策の最前線が分かる本です。


著者は国分寺市都市建設部都市計画課長で,近時のまちづくり条例の中でも先進的な内容を持つ国分寺市まちづくり条例(2004年)の立案の中心となった方です。本書はこの国分寺市条例の制度設計を説明することがメインですが,その中で現在の都市計画・まちづくりの法政策上のさまざまな論点・問題点を取り上げています。
本書の読みどころは次の3点にあります。1点目は,本条例の策定過程における市民参加のあり方に関する部分です(本書・11頁以下)。ワークショップや協議組織,あるいはパブリックコメントを利用した策定手続は,市民参加手法のショーケースと言えそうです。筆者は行政のポリシーなき市民参加を諫めるとともに,多くの市民が自発的に参加するスタイルを模索しようとしています。2点目は,本条例がもつ法的しくみの面白さです(とりわけ本書・39頁以下)。本条例は都市計画提案制度や都市計画法に基づく委任基準の内容と,自治体の独自のまちづくりのしくみ(自主基準・地区まちづくり計画など)とを一体として定めています。開発事業の際に自主基準を含めた審査がなされて適合確認通知書が交付され,さらに協定が締結されるしくみが注目されます。また,まちづくりのアクターとなるべき団体を育成するための法制度を設けている点も興味深いところです。3点目は,近時のまちづくりの動向として,景観法・景観条例の問題と,地下室マンションの問題とが取り上げられていることです(本書・133頁以下)。国分寺市のみならず,まちづくりに関する先進事例がいくつも紹介されているところにも本書の魅力があります。
都市計画・まちづくりの最前線を知る上でも,条例と法律の関係を考える上でも,あるいは市民参加の方法を探る上でも,本書が豊富に示す具体例は極めて有用だと思います。