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Konstanz als Heimatstadt

庄司克宏・欧州連合

欧州連合―統治の論理とゆくえ (岩波新書)

欧州連合―統治の論理とゆくえ (岩波新書)

読みやすいEUの入門書です。


EU法の手軽で分かりやすい入門書としては既に藤井良広EUの知識 (日経文庫)』(日本経済新聞社・2005年)がありますが,本書はより学術的な視点から,あるいは政治の観点からEUの現状を描きだしたものです。
本書の特色は,細かい議論や専門用語をなるべく避け,初学者にも読みやすい形でEUEU法の面白さを伝えようとしているところにあります。また,最近の動きでもある欧州憲法条約とその改正条約の動きについてもフォローされており,現段階でのEUに関する最新情報を知ることもできます。
他方で,叙述のレベルを落としていないことも分かります。例えばいわゆる「民主主義の赤字」(本書・22頁)では,デモス不在論とならび,効率性指向政策では説明責任さえ確保されればテクノクラート的アウトプットで足りるとする赤字必要論が紹介されていたり,立憲多元主義やコミトロジーといった概念が説明されていたりします。
EUのこれまでの経緯や現在の課題について知る上で,格好の入門書のように思われました。