- 作者: 磯山友幸
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2006/02/23
- メディア: 単行本
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筆者は日本経済新聞の記者で,前著『国際会計基準戦争』ではさまざまな角度から国際会計基準の策定をめぐる日本・世界の駆け引きを描いていました。本作では2年間のチューリッヒ支局長の経験を踏まえ,スイスの強さを分析しています。
ネスレ・スウォッチなどスイスを代表し日本でも知られるブランドは数多いです。本書ではこうしたスイスのブランドがいかなる方策で利益を出しているかをまず扱っています。薄利多売の日本とは違い,ブランドイメージを大事にして育てることで,利益を多く出すやりかたを本書は評価しています。
さらに本書はスイスそのもののブランド力へと議論を進め,金融の中心地としてのスイスを検討します。ここではマネーローンダリングなどのスイスの闇の部分も取り扱われています。さらにはグローバル経済のもとでスイスの従来のビジネスモデルが時代に適合できなくなっている部分も取り上げています。具体的にはスイスエアについて詳しく扱っています。
こうした分析を経て本書では,スイスに学ぶ7つの知恵を提唱します。高付加価値経済・プライベートバンク・美しい国土・外国人の活用などが挙げられています。
全体としてのトーンは『黒いスイス』よりもスイス寄りで,両方を合わせて読むとスイスの実像が分かるのかも知れません。また本書は最後に,スイスの国のかたちを日本と比較して分権型の優位を説きます。スイス的な分権モデルが直ちに日本の参考になるかどうかは議論の余地があるかも知れませんが,分権的社会の一つの究極の形がここに示されているように思われます。