大垣尚司・金融と法

金融と法 -- 企業ファイナンス入門

ファイナンスを巡る法的問題を広範囲かつ詳細に扱っています。

ファイナンスをめぐる議論は難しい用語が飛び交い，勉強するには敷居が高いと感じられます。しかしそこには法的な問題が多く存在しており，行政法からみても，金融商品取引規制・税制・業法規制など多くの問題と関わります。本書はファイナンスの最新の動向を踏まえながら，法律学の観点から平易な説明を試みています。
本書が取り扱っている問題領域は極めて広範です。金融の基本概念をなるべく法律学の概念と結びつけて説明した後に，会社法，債権・担保物権法，銀行法・貸金業法，信託法，保険業法，ファンド法制などが扱われています。これらは大学では別々の科目として講義されますが，そうした知識が現実の問題解決のために組み合わされていることがよく分かります。本書では所々に【復習】という表示があり，関連する法的な議論を説明している基本書のページが支持されています。
本書は600頁を超える大著であり，さまざまな分野が扱われているので，これを通読するのはかなり大変な作業だと思います。しかし興味関心に応じて読んでみると，ファイナンスの技術と法律学の議論とが密接に結びついていることを実感することができるように思います。