- 作者: 大蔵昌枝
- 出版社/メーカー: エディックス
- 発売日: 2011/03
- メディア: 単行本
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アメリカの陪審制度に関する研究はこれまでも数々存在していますが,本書の特色はそれを一般読者にも分かるように(なるべく法律学の難しい言葉を使わずに)説明していることと,最近注目された事件にも言及していることです。陪審制度の評価と表裏の関係にあるのが人種問題であり,本書の記述のかなりの割合がここに割かれています。ただ,本書の著者が日本人でありかつアメリカ・ジョージア州で移民法などを得意とする弁護士として活躍していることから,日系人差別の問題にも焦点が当てられています。
本書の後半1/3では日本の裁判員制度が取り上げられています。アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度は似て非なるものなので,前半部分のアメリカの記述がダイレクトに連携しているわけではありません。しかし,アメリカにおける取り調べや裁判過程の透明性と日本の不透明性が対照され,日本の裁判員制度の見直しの際には裁判員の守秘義務を緩和すべきであるという指摘は,傾聴すべきもののように思われました。