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Konstanz als Heimatstadt

北村喜宣・環境法

環境法

環境法

環境法のしくみとその背景にある考え方を分かりやすく説明しています。


行政法が参照の対象にしている法領域の中でも,環境法ほど動態的な分野はありません。そのため,環境法の動向を把握するのは困難を極めます。本書はその環境法の全体像の把握と,個別法制度の正確な理解の二兎を追った基本書です。
環境法の入門書としては,同じ著者によるプレップ環境法〈第2版〉 (プレップシリーズ)があります。これに対して本書はかなり分厚い分量で,環境法全般について詳細な検討を加えたものです。
内容面では,総論部分と各論部分とに分け,総論部分では環境法の意義や基本的な考え方について,各論部分では主要な環境個別法領域について解説を加えています。各論の説明は制度の仕組みを解説することに終始するのではなく,著者独自の視点からそのしくみの持つ意義やイメージをコンパクトかつダイレクトに説明しているところに大きな特色があります。また総論部分では行政法の(比較的難解な)考え方をとても分かりやすく環境法にあてはめて説明している箇所が多いので,行政法総論の知識の定着や復習にも大きな威力を発揮するように思います。
形式面では,二色刷でとても見やすく,また重要部分の強調やコラムなどにも工夫が凝らされています。コラムにあたる「トリビア環境法」ではかなり高度な内容も扱われており,本書が単なる基本書にとどまっていないことを示しています。参考文献表示がやや少なめな点が残念なところですが,本書が分量を抑えて環境法に対する敷居を低くしようとしていることからすると,やむを得ないと思います(参考文献の詳細な情報を得るには大塚直・環境法の方がよいかもしれません)。
本書の第一義的な読者層は法科大学院で環境法を学んでいる学生だと思います。しかしそれにとどまらず,環境法に関心を有する学部生や研究者にも,環境法の面白さを説き,多くの知的刺激を与える作品であるように思われました。